鬼ヶ城三重県熊野市

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鬼ヶ城DATA
築城 1523年頃
住所 三重県熊野市木本町1835-7

世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」構成要素の一つ。

鬼ヶ城への交通アクセス
JR紀勢本線「大泊駅」駅から徒歩約25分。

鬼ヶ城、熊野灘を背にした世界遺産の「鬼岩屋」

三重県熊野市の熊野灘沿いにあった「鬼ヶ城」は、室町時代に有馬氏が岸壁の山頂に築城した城です。「熊野の鬼ケ城 附 獅子巖」として国の名勝・天然記念物に指定されており、平成16年(2004年)には「紀伊山地の霊場と参詣道」の一部として世界遺産にも登録されました。

鬼ヶ城
鬼ヶ城の歴史
「鬼ヶ城」はもともと、熊野灘の荒波の浸食と地震による隆起や風化等で作り出された凝灰岩の大岩壁を指します。現在は遊歩道が整備されており、約1.2kmの歩道の間に洞窟が階段状に並んでいるほか、奇岩奇勝が楽しめるスポットです。
同地はもともと「鬼の岩屋」と呼ばれており、平安時代、桓武天皇(737年~ 806年)のころ、征夷大将軍・坂上田村麻呂が鬼と恐れられていた熊野の海賊・多娥丸(たがまる)を弓で仕留めて征伐した、という伝説が残っています。
その後、大永年中(1523年頃)に当時の領主・有馬忠親(有馬和泉守忠親)が大岩壁の上、標高153mの山頂に隠居のための城「鬼ヶ城本城」を築城。このため、周辺一帯が「鬼ヶ城」と呼ばれるようになり、現在に至ります。
有馬氏は熊野三山を統括していた熊野別当家の出身で、産田神社(現三重県熊野市有馬町)の神官・榎本氏が紀伊国牟婁郡有馬の一帯に勢力をはって「有馬氏」と名乗ったのが始まりだといわれています。
忠親は子どもに恵まれなかったため、甥の忠吉(有馬河内守忠吉)を跡継ぎとして指名し、鬼ヶ城本城を築いて隠居しました。しかし隠居後に子どもが生まれたため、忠親は自分の子に跡を継がせようと、忠吉にぬれぎぬを着せて自刃に追い込みました。これに怒りを覚えた忠吉の親族は鬼ヶ城本城を攻め落とし、忠親は脱出するも後に自刃。その後は嫡男の有馬孫三郎が家督を継いだものの25歳で亡くなり、有馬氏の親族・大和守城代が跡を継ぎます。
その後、堀内新宮城(和歌山県新宮市)を治める堀内氏虎(堀内安房守氏虎)と数度戦になりますが和議が成立。有馬氏は堀内氏の次男である8歳の楠若を養子に迎えたため、堀内氏が有馬氏を乗っ取る形となりました。後に楠若は「堀内氏善」として堀内氏を継ぎ、有馬氏は氏善の5男が継いだそうです(この段階で有馬氏は断絶した、という説も)。その後、堀内氏は織田氏や豊臣氏に仕えて同地を治めますが、関ヶ原の戦いで西軍についたことで領地を奪われて没落。最終的には加藤清正に仕えて熊本に移りました。
鬼ヶ城本城が廃城になったタイミングははっきりしませんが、大正時代の終わり頃から観光地として注目されるようになり、昭和に入って整備が進みました。昭和10年(1935年)には国の天然記念物となり、昭和11年(1936年)、鬼ヶ城本城を含む紀伊半島の中央部から南西岸までが「吉野熊野国立公園」に指定されます。その後、熊野古道・松本峠と連結するハイキングコースが整備され、平成16年(2004年)には「紀伊山地の霊場と参詣道」の一部として世界遺産にも登録されました。
鬼ヶ城本城の規模感は?
鬼ヶ城本城は東西30m、南北330mに広がり、堀切を3ヶ所、城郭を十数ヶ所所有する、当時としては同地方最大規模の山城でした。本丸は東西約24m、南北約31mに広がっているほか、二の丸も確認されています。
鬼ヶ城の見どころ①城まで続く遊歩道と桜並木
鬼ヶ城本城へは鬼ヶ城東口にある複合施設「鬼ヶ城センター」の駐車場にある登城口からアクセスできます。城跡までは約2000本・4種類の桜が植えられた「桜の道」が続いており、春になると美しい桜並木を楽しみながら登城できます。山頂にある城跡の先にはビュースポット「鬼の見晴らし台」があり、熊野灘が一望できますよ。山頂までは約20分の道のりです。
また、熊野古道の松本峠からもハイキングコースがつながっており、こちらは城跡から約30分。3本の堀切が残っているので確認しながら歩きましょう。遊歩道・ハイキングコースともに道が悪い箇所があるので、運動靴は必須です。
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鬼ヶ城の見どころ②岩壁沿いの遊歩道
鬼ヶ城本城の下は海岸線に沿って遊歩道が整備されており、東口⇔西口間で、片道約1.2㎞の道を洞窟や奇岩を楽しみながら歩くことができます。とくに有名なのが上段下段に分かれた大洞窟「千畳敷」です。高さは約15m、広さはなんと約1500㎡にも及ぶ洞窟は、伝説によれば多娥丸の住み家だったそう。凝灰岩が海蝕された様子をはっきりと見学できます。平らな岩棚から海に向かっての眺望が素晴らしい、必ず訪れたいスポットです。
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鬼ヶ城のフォトポット
遊歩道の途中にある石垣や堀はぜひ見つけてほしいところ。鬼の見晴らし台からの熊野灘はしっかり写真に収めましょう。海岸線沿いの遊歩道には多くのフォトスポットがあり、鬼ヶ城本城を訪れた後はぜひ訪れてほしいところ。東口から千畳敷、奥の木戸、猿戻り、鬼の風呂桶、犬戻り、神楽岩…とさまざまな洞窟や絶壁、奇岩などがあり、飽きることなく散策できます。
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栗本 奈央子
執筆者 栗本 奈央子(ライター) 元旅行業界誌の記者です。子供のころから日本史・世界史問わず歴史が大好き。普段から寺社仏閣、特に神社巡りを楽しんでおり、歴史上の人物をテーマにした「聖地巡礼」をよくしています。好きな武将は石田三成、好きなお城は熊本城、好きなお城跡は萩城。合戦城跡や城跡の石垣を見ると心がときめきます。