春日山原始林とは、奈良県奈良市春日野町に広がる春日大社の神域の森である。春日大社の東側、御蓋山から春日山にかけて広がる森林で、古くから神が鎮まる山として大切にされてきた。承和8年(841)には、春日神山での狩猟と伐採を禁じる命令が出され、以来、春日大社の聖域として保護されてきた。市街地に近接しながら、シイ・カシ類を中心とする照葉樹林が原生的な状態で残る点が大きな特徴である。森の中には、春日杉と呼ばれる大木、モミ、ツガ、イロハモミジ、シダ類、コケ類など多様な植物が生育し、鳥類、昆虫、ムササビ、カエルなどの生きものも見られる。春日山原始林は、大正13年(1924)に天然記念物、昭和30年(1955)に特別天然記念物に指定された。さらに、自然そのものだけでなく、神山として守られてきた日本人の自然観を示す文化的景観として、平成10年(1998)に「古都奈良の文化財」の構成資産として世界文化遺産に登録された。春日山遊歩道を歩くことで、奈良公園のにぎわいとは異なる、静かな神域の森を体感できる。
| 目的 | 春日大社の神域保護、御蓋山・春日山の神山信仰の継承、照葉樹林の保存、特別天然記念物としての自然保護、世界文化遺産としての文化的景観の継承、自然観察、歴史散策、旧柳生街道・滝坂の道の歴史理解 |
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| 特長 | 春日山原始林、春日山、御蓋山、春日大社、春日神山、春日奥山、特別天然記念物、世界文化遺産、古都奈良の文化財、照葉樹林、シイ、カシ、春日杉、モミ、ツガ、ムササビ、野鳥、ヒメハルゼミ、モリアオガエル、春日山遊歩道、滝坂の道、旧柳生街道、首切地蔵、鶯の滝、若草山、奈良公園 |
| 他の史跡・自然地との違い | ・単なる森林ではなく、春日大社の神山として信仰により守られてきた森である ・承和8年(841)以来、狩猟・伐採が禁じられ、都市に近接しながら原生的な照葉樹林が残されている ・世界遺産では自然遺産ではなく、「古都奈良の文化財」を構成する文化遺産の一要素として登録されている ・春日大社、奈良公園、春日山原始林、神鹿が一体となり、神域・自然・人の営みが共存する景観を形成している ・春日山遊歩道や滝坂の道を歩くことで、森の自然だけでなく、旧柳生街道や石仏などの歴史も体感できる |
| 別称 | 春日山、春日奥山、春日神山、春日大社の神域の森 |
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| 正式名称 | 春日山原始林 |
| 所在地 | 奈良県奈良市春日野町 |
| 成立 | 自然の森林。春日大社の神山として古くから信仰され、承和8年(841)に狩猟・伐採が禁じられて以来、神域として守られてきた |
| 性格 | 春日大社の神域、原生的な照葉樹林、国の特別天然記念物、世界文化遺産「古都奈良の文化財」の構成資産 |
| 主な植生 | シイ、カシ類を中心とする照葉樹林。春日杉、モミ、ツガ、イロハモミジ、イヌシデ、シダ類、コケ類なども見られる |
| 主な生きもの | 野鳥、ムササビ、シカ、モリアオガエル、ヒメハルゼミ、昆虫類など |
| 主な見どころ | 春日山遊歩道、春日奥山道路、滝坂の道、旧柳生街道、首切地蔵、鶯の滝、春日杉や照葉樹林の巨木、苔むした森、若草山方面の眺望 |
| 文化財指定 | 大正13年(1924)に天然記念物、昭和30年(1955)に特別天然記念物に指定 |
| 世界遺産登録 | 平成10年(1998)に「古都奈良の文化財」の構成資産として世界文化遺産に登録 |
| 世界遺産上の位置づけ | 自然遺産ではなく、春日大社の神域として守られてきた文化的景観として、文化遺産の一要素に含まれる |
| 見学方法 | 春日山遊歩道や滝坂の道を歩いて見学する。指定区域内では自然保護のため、遊歩道から外れないことが基本 |
| 春日山遊歩道 | 春日山原始林を周回する全長約9.4kmの遊歩道。遊歩道入口北から遊歩道入口南まで歩くコースで、所要時間はおおむね3時間前後 |
| 見学時間 | 屋外散策は原則自由。ただし山道のため、日中の明るい時間帯の利用が望ましい |
| 休館日 | 屋外のためなし。荒天時、倒木、工事、保全作業等により通行できない場合あり |
| 見学料 | 無料 |
| 問い合わせ | 奈良公園事務所、奈良市観光センター、春日大社など、目的に応じて確認 |
| アクセス | 近鉄奈良駅から春日大社方面へ徒歩またはバス。春日大社から春日山遊歩道入口方面へ徒歩でアクセスできる |
| 備考 | 春日山原始林は、春日大社の神域であり、特別天然記念物でもある。植物の採取、動物への接触、遊歩道外への立ち入り、ゴミの放置は避ける必要がある。森の中は昼でも暗く、雨天後は足元が滑りやすい。春日山遊歩道は観光散策というより軽いハイキングに近いため、歩きやすい靴、水分、時間の余裕をもって訪れるのがよい。奈良公園、春日大社、若草山、東大寺、滝坂の道と組み合わせると、奈良の信仰・自然・歴史を一体で理解しやすい。 |
| 古代 | 春日山と御蓋山は、神が鎮まる山として信仰され、春日大社の神域と考えられるようになる |
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| 710年 | 和銅3年、平城京遷都が行われる。春日の地は、都の東方を守る神域として重視される |
| 768年 | 神護景雲2年、称徳天皇の勅命により、春日大社の御本殿が御蓋山の麓に造営される |
| 奈良時代後期 | 春日大社は藤原氏の氏神として崇敬され、御蓋山・春日山は神域として意識される |
| 841年 | 承和8年、春日神山での狩猟と伐採を禁じる命令が朝廷から出される |
| 平安時代 | 春日大社への崇敬が高まり、春日山は神の山として守られる。貴族の春日詣も盛んになる |
| 平安時代後期 | 春日山の森は、春日大社の神域として、信仰により保護され続ける |
| 鎌倉時代 | 春日信仰は武家や庶民にも広がり、春日山の神聖性も受け継がれる |
| 中世 | 春日山周辺には、柳生方面へ通じる山道や滝坂の道が通り、信仰と交通の道が重なっていく |
| 室町時代 | 春日山の森は、春日大社・興福寺と結びつく神仏習合の信仰圏の中で守られる |
| 江戸時代 | 春日大社への参詣や奈良見物が広がる中、春日山は神域の森として維持される |
| 明治時代 | 神仏分離や近代制度の変化の中で、春日山は国有地となり、のちに奈良公園へ編入される |
| 1880年 | 明治13年、奈良公園が開設され、春日大社や東大寺周辺とともに奈良を代表する公園景観が形づくられる |
| 1924年 | 大正13年、春日山原始林が国の天然記念物に指定される |
| 1955年 | 昭和30年、春日山原始林が国の特別天然記念物に指定される |
| 昭和時代後期 | 春日山原始林は、奈良公園と春日大社の神域を支える貴重な照葉樹林として、学術的にも観光的にも注目される |
| 1998年 | 平成10年、春日山原始林が「古都奈良の文化財」の構成資産としてユネスコ世界文化遺産に登録される |
| 21世紀 | 都市近郊に残る原生的な森として評価される一方、ナラ枯れ、シカによる下層植生への影響、外来植物など、保全上の課題も指摘されるようになる |
| 現代 | 奈良県などにより春日山原始林の保全計画が進められ、長期的な視点で照葉樹林の回復と神域景観の継承が図られている |
| 現在 | 春日山原始林は、春日大社の神域、特別天然記念物、世界文化遺産「古都奈良の文化財」の一部として、奈良の自然観と信仰を伝える森であり続けている |