大久保長安事件(2/2)江戸初期の横領事件?それとも政変?「大久保長安事件」とは

大久保長安事件

記事カテゴリ
事件簿
事件名
大久保長安事件(1613年)
場所
山梨県
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関係する人物

長安亡き後、彼には金銀山を利用した横領による不正蓄財、幕府転覆疑惑などがかかり、結果として一族郎党が処刑され、大久保忠隣をはじめかかわった人物も厳罰が与えられました。長安の死を契機とみた本田親子率いる文治派による巻き返し策だったようで、一説によれば本田正信が忠隣を追い落とそうと家康に讒言したとのこと。ちなみに、本当に長安は不正蓄財して幕府転覆をもくろんでいたのか、といった真相ははっきりと明らかにはなっていません。

では、長安が断罪された理由を1つずつ見ていきましょう。

1.金銀山の統括をしていたことをいいことに、幕府の収入を横領して私腹を肥やしていた
鉱山奉行だった長安ですが、鉱山の経費や人件費を負担する代わりに、全利益の6割を自身の収入とすることができていました。残りの4割は幕府の収入なのですが、ひそかに虚偽の報告をして金品を懐に収め、派手に散財していたというのです。長安の屋敷からは一説によれば約70万両の隠し財産が出てきたそうです。不正蓄財によるものなのかは定かではありませんが、文治派からすれば格好の攻撃材料でした。
なお、こうした蓄財や茶道具一式をはじめとする金製・銀製の道具などは幕府により没収されています。
2.武田家の再興と幕府転覆の疑惑
長安は武田家に恩義を感じており、八王子千人同心も旧武田家の家臣が中心となっていました。また、長安は信玄の孫である甲府・長延寺住職の顕了(武田信道)や6女の信松尼(松姫)の援助をしていました。こうした武田寄りの行動が謀反の疑いを招いたようです。長延寺に武田家伝来の家紋が書かれた甲冑や軍配、旗などの道具類があったことも、武田家再興を企んでいた証拠だとみなされてしまいました。
3.伊達政宗と組んで幕府転覆
親交の深かった伊達政宗の幕府転覆計画に賛同し、明やスペインなどの海外勢と協力して、政宗の娘婿となった主君の松平忠輝を将軍に据えようとした、長安が関白になる計画があった、といった話もあったようです。屋敷から幕府転覆をはかる連判状は見つかったとされていますが、現存していません。

息子7人、腹心は処刑

さて、こうした長安の所業(とされるもの)に対し、家康は蓄財の調査に反対した長安の7人の息子を全員処刑したほか、長政の家臣たちを死に追いやりました。さらに、長安の遺体を掘り起こしてその首を落とし、見せしめとして駿河国(静岡県)安倍川の河原にさらし首にしています。

ちなみに、長安には3人の娘がおり、1人は松平忠輝の家老である花井吉成の後継者の義雄に、1人は服部半蔵の次男の服部正重に、もう1人は武田家旧臣の三井吉正に嫁いでいますが、こちらは難を逃れました。処刑された人々の詳細は以下の通りです。

【一族】
長男:大久保藤十郎(享年37):石川康長の娘と結婚、奈良奉行を務めた
次男:大久保藤二郎(享年36):池田輝政の娘と結婚
三男:青山成国(大久保権之助):青山成重の娘と結婚、青山の婿養子に
四男:大久保運十郎(享年29)
五男:大久保藤五郎(享年27)
六男:大久保権六郎(享年23):花井吉成の娘と結婚
七男:大久保藤七郎(安寿)(享年15)
【腹心】
戸田藤左衛門
山田藤右衛門
米津正勝(堺奉行)は阿波国に配流の後処刑
このほか、家臣や下役が多数斬首された
【処分された主な関係者】
  • 青山成重:七千石を減封のうえ閉門処分
  • 石川康長:弟の康勝、康次と共に改易、所領没収のうえ豊後国佐伯(大分県)に配流
  • 武田信道:子と共に伊豆大島へ流罪
  • 大久保忠隣:改易(本田正信の讒言など、他の理由も重なった)

このほか、松平忠輝は大坂夏の陣の遅参などを理由に家康の没後、改易配流されていますが、大久保長安事件をきっかけに幕府から警戒されていたのがそもそもの要因、との説があります。

長安は生前、疑惑に気づいていた?

こうして大久保長安事件をきっかけに武断派は総崩れになりました。厳しい処分が下った背景には、不正をした代官への見せしめの意味もあったと考えられますが、長安自身はうすうす自分が疑われていたことに感づいていた節があります。

その証左となるのが、「戸田藤左衛門所蔵文書写」の中に見つかった、死後数日前に藤堂高虎に出された覚書。担当していた金銀山の決済が済んでいることや、それぞれの担当者名などがずらりと書かれており、「御公方物少成共我等手前へつかひ不申候事」、つまり幕府のものを勝手に使ったりしていません、とアピールしています。

本当に不正はあったのか、なかったのか、真相は歴史の闇の中です。皆さんはどう思いますか?いろいろと考えてみるのも面白いかもしれませんね。

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関係する人物
執筆者 (ライター) 元旅行業界誌の記者です。子供のころから日本史・世界史問わず歴史が大好き。普段から寺社仏閣、特に神社巡りを楽しんでおり、歴史上の人物をテーマにした「聖地巡礼」をよくしています。好きな武将は石田三成、好きなお城は熊本城、好きなお城跡は萩城。合戦城跡や城跡の石垣を見ると心がときめきます。