国宝犬山城圧巻の本物を堪能する

言わずと知れた国宝「犬山城」。天守は現存する日本最古の様式で、国宝5城のうち、最も古いお城です。その美しさは李白の歌に準えて「白帝城」とも呼ばれます。
信長、秀吉、家康がそれぞれのターニングポイントとなる時期にこの城を奪いました。それはここが大河木曽川のほとりであるという、交易の要衝であるから。
インターネットのない戦国時代、「情報」を手に入れることは重要な戦略でした。
交通の便がよく、情報が入りやすい場所に立地し、尾張と美濃の国を一望できる軍事拠点として築城されたお城だったのです。

歴史的価値のある犬山城は、お城マニアでなくてもため息の出る魅力に溢れています。その歴史と魅力をご紹介します。

犬山城の歴史

犬山城は1537年、織田信長の叔父が築城しました。1565年には一族の領地争いで、信長が従兄弟から奪取し、1581年、信長の四男勝長が入城しました。
本能寺の変の後には、羽柴秀吉軍と、織田信雄・徳川家康連合軍との戦い「小牧長久手の戦い」が起こります。
当時、犬山城主は織田信雄の家臣・中川定成でしたが、伊勢に出陣していたため不在であったため、秀吉軍の池田恒興が木曽川を渡り城内に侵入し落城。後に秀吉が入城し、秀吉の支配下に置かれました。
1600年の関ヶ原前哨戦では東軍が占拠。1617年からは、徳川家康の重臣・成瀬正成が領し、幕末まで城主として君臨しました。

明治に入ると天守以外取り壊し、一時愛知県の所有に。しかしながら、1891年、濃尾大地震で天守が半壊し、修理を条件に愛知県から成瀬家へ譲与され修復されました。
そして、1935年に国宝に指定されたのです。

天守は約24m、初期望楼型で、一見三階建てに見える外観は、中に入ると四階建てという地上三層四階、地下二階の作りです。

犬山城の見どころ①歴史の古さを感じさせる建物

どこを切り取っても魅力が溢れる犬山城ですが、その魅力を3つに絞ってお伝えします。

1つ目は、歴史の古さを感じられる造りです。
まず、こちらの石垣は、茶色く隙間がありやや歪な印象を受けますね。
この石垣は自然石をそのまま積み上げた「野面積」。綺麗に切られた隙間なく積まれる石垣は江戸以降。まだ石切の技術が発展する前に作られ、土地柄、チャートなどが使われているため茶色く歪な形をしています。この歪さが歴史の古さを感じさせ、魅力的ですね。

また、地下1、2階は穴蔵の中の石垣を間近に見ながら通ることも。これだけでも城マニアの心をくすぐるのではないでしょうか。

また、柱を見ても、古い時代から残されていることを感じられます。こちらの柱には斜めの削り跡が残っていますね。こちらは、大鋸(おおが)という2人がかりでひく長い鋸ではつられたため、このような削り跡が残っているのです。
後の時代は、別の道具(鉋など)ではつるようになるため、このような跡は残っていません。ぜひ注目してみてくださいね。

犬山城の見どころ②軍事拠点を感じさせる構造

この時代の建物は、頭をぶつけそうになる程、梁が低いことが多いのですが、この場所は天井の高さや解放感を感じられます。
ここは「武者走り」と呼ばれ、槍を立てても引っかからないように持っていけるよう、高く施されているのです。
こうした作りから、このお城が権威の象徴でなく、「軍事拠点」として作られたことを感じられますね。

海外(特に欧米)では、軍事拠点は大抵石で作られているもの。「木造」の軍事拠点そのものが稀でありそれが今も現存して見学できることが貴重なのです。
このほか、石落としや階段の作りなども、敵襲があった時の備えが多々施されています。
もし敵としてこの城の中に入り込んだら、勝ち目がなさそうだと思いながらあちらこちらを見てくださいね。

犬山城の見どころ③交通と情報の要衝を感じる望楼

(犬山市観光協会提供)

犬山城の望楼は、廻縁を360度ぐるりと一周することができ、ここから優雅に流れる木曽川が見渡せます。
犬山城から扇型に岡崎城、名古屋城、小牧山城、岐阜城へと広がり尾張と美濃の国を一望することができます。
天下人がここを欲しがった理由をひしひしと感じられる場所です。
見晴らしが良く、情報が集まり、軍事拠点として機能していたことを全身で体感し、解放感に身を委ねましょう。

さらに、知りたい人へ。犬山城の不思議

山上にポツンとたち、土地には困らないはずですが、部屋の奥に行くほど狭くなる、「台形」の形をしています。
これは遠近法ではなく奥に行くほど、斜めに狭く作られているのです。なぜこのような作りになったのかは、まだ証明されていません。
あなたは、なぜこのような作りになっていると思いますか?

また、こちらの望楼は城郭では珍しい、真壁作り。通常のお城は柱を塗りこめ真っ白な壁をしていますが、なぜか柱が剥き出しになっています。

そして、最後に、下から見上げると下から1層目、2層目の屋根には漆喰が打たれ白くなっていますが、最上階の三層目は漆喰を打たず、黒いまま。これも不思議の一つです。
これにはどんな意味があるのでしょうか?
まだ解明されていない不思議があるのも、魅力の一つ。歴史のロマンに想いを馳せながら楽しみたいですね。

犬山城の魅力の一部をご紹介しましたが、まだまだ見どころはたくさんあります。
このお城が初心者から、お城マニアまで心を掴むのは、本物の魅力に溢れているからでしょう。
足を運ぶたびに感動がある犬山城。ぜひ訪れてみてくださいね。

(取材協力:一般社団法人 犬山市観光協会)

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国宝天守
神谷加奈子
紹介者 神谷加奈子(ライター) 歴史を教えながら、歴史ある場所やものを取材している。 専門は唯識。推しの武将は本多忠勝。 Instagram @kanako_kamiya 公式HP・SNSはこちら
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