望楼型天守(ぼうろうがたてんしゅ)屋根の上に見張り台を載せた初期天守の仕組み
- [執筆者] 日本の旅侍編集部(メディア)
- 望楼型天守とは
- 望楼型天守とは、大きな建物の上に見張り台のような望楼を載せた形式の天守のこと
- 下部に大きな屋根を持つ建物があり、その上に小さな上層部が載るように見える外観を持つ
- 初期の天守に多く見られる形式で、整然と積み上がる層塔型天守とは構造や見た目が異なる
- 下部は防御や内部空間を担い、上部の望楼は遠くを見渡す監視機能を担う
- 犬山城や彦根城は、望楼型天守の代表例として知られている
- 望楼型天守は、必要な高さと監視機能を建物の上に追加した、機能優先の初期天守である
望楼型天守とは、大きな建物の上に見張り台のような望楼を載せた形式の天守です。下部に大きな屋根を持つ建物があり、その上に小さな上層部が載るように見える点が特徴です。初期の天守に多く見られ、下部は防御や内部空間を担い、上部は遠くを見渡す監視機能を担いました。後の層塔型天守のように整然と積み上がる形式とは異なり、必要な機能を上に追加したような実用的な構造を持ちます。犬山城や彦根城は、望楼型天守の代表例として知られています。
天守は、最初から完成されていなかった
天守というと、整った層が下から上へ積み上がる姿を思い浮かべるかもしれない。
一階、二階、三階。
屋根が規則的に重なり、上へ行くほど小さくなる。
外観にも統一感があり、城の中心として整った姿を見せる。
しかし、初期の天守は必ずしもそうではなかった。
望楼型天守(ぼうろうがたてんしゅ)は、その代表である。
望楼型天守とは、大きな建物の上に、見張りのための小さな楼を載せたような構造を持つ天守である。
下部は大きな屋根を持つ建物として構成され、その上に監視塔のような上層部が載る。
つまり、最初から一体的に積み上げた高層建築というより、既存の建物の上に見張り台を追加したように見える形式である。
もちろん、実際にすべてが後から増築されたという意味ではない。
重要なのは、構造と見た目の考え方である。
まず、守るための建物がある。
その上に、遠くを見るための望楼を載せる。
この発想が、望楼型天守の本質である。
望楼型天守は、見た目の美しさよりも、まず機能を優先した天守である。
- 監視する
- 敵の接近を察知する
- 城の中核を示す
- 必要な高さを確保する
そのために、既存の建築形式の上へ、監視塔を載せる。
望楼型天守は、初期天守らしい試行錯誤の形であり、城が高層化していく過程を感じさせる建築形式である。
望楼型天守の基本、大きな屋根の上に小さな望楼を載せる
望楼型天守の特徴は、下部と上部の構造がはっきり分かれて見えることである。
下部には、大きな入母屋屋根を持つ建物がある。
その上に、小さな望楼のような建物が載る。
このため、外観を見ると「屋根の上に、もう一つ小さな建物が載っている」ように見える。
これが望楼型天守の分かりやすい特徴である。
下の建物は、広く、重く、どっしりしている。
上の望楼は、軽く、小さく、遠くを見るために高い位置に置かれている。
つまり、役割が分かれている。
下部は、防御と建物としての安定を担う。
上部は、監視と象徴性を担う。
この構成は、非常に実用的である。
城に求められるのは、まず守れることだった。
敵の攻撃に耐え、内部の空間を確保し、武器や兵を収める必要がある。
しかし、それだけでは足りない。
遠くを見渡すためには高さが必要である。
城の存在を示すためにも、上へ伸びる建物が必要になる。
そこで、大きな建物の上に、見張りのための楼を載せる。
望楼型天守とは、防御建築の上に監視機能を追加した天守なのである。
構造〜一体化よりも、必要な機能を積み上げる
望楼型天守は、整った高層建築というより、必要な機能を積み上げた建物である。
まず、基礎となる大きな建物がある。
その上に、遠くを見るための望楼が載る。
この考え方は、非常に初期的であり、同時に合理的でもある。
最初から完全に整った高層建築を作るには、技術も計画も必要になる。
各階の柱や壁、屋根の位置を揃え、荷重を下へ伝え、外観にも統一感を持たせなければならない。
しかし望楼型天守では、発想が少し違う。
まず、城の中核となる建物を作る。
その上に、必要な高さを追加する。
これは、機能優先の考え方である。
遠くを見る必要があるから、高い場所を作る。
城の存在を示したいから、目立つ上層を載せる。
防御拠点として使いたいから、下部は大きく堅牢にする。
結果として、下部と上部の形がやや不連続に見える。
だが、その不連続さこそ、望楼型天守の特徴である。
後の層塔型天守のように、下から上まで整然と積み上げるのではない。
必要な機能を、必要な場所に追加していく。
望楼型天守は、完成された規格品ではなく、初期天守の試行錯誤を残す構造なのである。
監視〜望楼は、遠くを見るための装置である


望楼型天守の上部に置かれる望楼は、遠くを見るための場所である。
- 敵の接近
- 街道の動き
- 城下町の様子
- 川や平野の変化
- 周辺の山や尾根
高い位置から見ることで、城は早く情報を得ることができる。
城の防御において、情報は重要である。
敵が近づいてから対応するのでは遅い。
できるだけ早く発見し、備える必要がある。
そのためには、視界の広さが必要になる。
望楼型天守は、下部の建物の上に望楼を載せることで、この視界を確保した。
山城や平山城では、地形そのものが高さを与える。
しかし、さらに天守を建てれば、視界はより高くなる。
望楼型天守の上層部は、城の目である。
城の外を見張り、敵の動きを察知し、周囲の状況を把握する。
そのための高さを、建物の上に追加する。
つまり望楼型天守は、監視機能を後から上乗せしたような構造を持つ天守なのである。
防御〜高さを得ながら、下部で守る


望楼型天守は、見張るだけの建物ではない。
天守である以上、防御拠点としての意味も持つ。
下部の大きな建物は、内部空間を確保し、兵や武器を収める役割を持つ。
石垣の上に建てられれば、敵はまず高い石垣を越えなければならない。
壁には狭間が設けられ、敵を攻撃できるようにする。
石落としや出格子のような仕組みを備える場合もある。
一方、上部の望楼は、見張りと指揮のために機能する。
- 敵の位置を見る
- 味方の配置を見る
- 城内外の状況を把握する
- 必要に応じて合図を出す
つまり望楼型天守では、下部と上部で役割が分かれる。
下部は、守るための量を持つ。
上部は、見るための高さを持つ。
この組み合わせによって、天守は防御拠点として成立する。
望楼型天守の魅力は、この機能の分かれ方にある。
整った美しさよりも、まず実用性がある。
遠くを見るために上へ載せる。
守るために下を固める。
その素直な構造が、初期天守らしい力強さを生んでいる。
外観〜不規則さが、初期天守らしさを生む
望楼型天守は、外観に不規則さが出やすい。
下部の屋根が大きい。
その上に、小さな望楼が載る。
屋根の向きや大きさが階層ごとに変わる。
上と下で建物の性格が異なって見える。
後の層塔型天守のように、整然とした段階的な積み上がりにはならない。
しかし、その不規則さは欠点ではない。
望楼型天守は、機能を積み上げた結果として、その姿になっている。
必要な広さを下部に確保する。
必要な高さを上部に追加する。
屋根の上に望楼を載せることで、監視機能を高める。
この機能の重なりが、外観にも表れている。
犬山城天守や彦根城天守を見ると、下部の屋根と上部の望楼がつくる独特のバランスが分かる。
整いすぎていないからこそ、古い天守らしい迫力がある。
望楼型天守は、初期の城郭建築が高層化していく過程をそのまま残している。
そこには、後の時代の規格化された美しさとは違う魅力がある。
計画的に整えられた美しさではなく、必要な機能を重ねた結果としての美しさ。
それが、望楼型天守の外観のロジックである。
層塔型天守との違い、増築型か、積み上げ型か
望楼型天守を理解するには、層塔型天守との違いを見ると分かりやすい。
層塔型天守は、各階が下から上へ規則的に積み上がる形式である。
上へ行くほど段階的に小さくなり、外観にも統一感がある。
一方、望楼型天守は、大きな屋根を持つ建物の上に望楼を載せたような形式である。
下部と上部が一体的に連続しているというより、機能が重なっているように見える。
つまり、層塔型天守が「最初から高層建築として設計された天守」だとすれば、望楼型天守は「防御建築に監視塔を載せた天守」といえる。
望楼型は、増築型に見える。
層塔型は、積み上げ型に見える。
この違いは、単なる見た目の違いではない。
望楼型天守には、初期天守の実験的な性格がある。
まだ天守の形が完全に定型化されておらず、既存の建築形式をもとに高さを加えている。
層塔型天守には、天守建築が発展し、形式として整理されていった段階の性格がある。
構造も外観も、より計画的に整えられている。
望楼型天守は、天守が生まれ、発展していく途中の姿を伝える形式である。
だからこそ、見るべきなのは整然とした美しさだけではない。
どこに下部の建物があり、どこから望楼が載っているのか。
その境目を見ることで、望楼型天守の成り立ちが見えてくる。
犬山城・彦根城に見る望楼型天守
望楼型天守の代表例としてよく挙げられるのが、犬山城と彦根城である。
犬山城天守は、現存天守の中でも古い形式を伝える天守として知られる。
外観を見ると、下部の大きな屋根の上に、望楼が載るような構成が分かりやすい。
木曽川を見下ろす高台に立ち、天守そのものが監視と象徴の役割を担っている。
犬山城では、天守の形そのものに初期天守らしい実用性が表れている。
整然と積み上げられた層塔型ではなく、下部の建物に望楼を載せたような姿が特徴である。
彦根城天守も、望楼型天守として知られる。
規模は大きくないが、屋根の変化が豊かで、外観に複雑さがある。
装飾性もありながら、上部に望楼を載せたような構成が見られる。
彦根城は、天守だけでなく、天秤櫓や太鼓門櫓などの櫓群とも組み合わされて城全体の防御システムを作っている。
その中で天守は、城の中核に立つ象徴的な建物として機能している。
犬山城と彦根城に共通するのは、天守が単なる美しい高層建築ではなく、初期天守の構造的な考え方を残している点である。
下部で守り、上部で見る。
大きな屋根の上に、監視のための楼を載せる。
この構成を見ることで、望楼型天守の本質が理解できる。
見るべきポイント、望楼型天守では「屋根の上」を見る
望楼型天守を見るときは、まず屋根の構成を見るとよい。
どこに大きな屋根があるのか。
その上に小さな望楼が載っているように見えるか。
下部と上部の境目はどこか。
屋根の向きや大きさに変化があるか。
外観が一体的に積み上がっているのか、それとも機能が重なっているように見えるのか。
ここを見ると、望楼型天守らしさが分かる。
天守を正面から見るだけではなく、少し斜めから見るとよい。
屋根の重なりや上部の載り方が見えやすくなる。
また、下から見上げると、天守がどのように高さを得ているのかが分かる。
大きな屋根の上に、さらに高い視点を作っていることが見えてくる。
望楼型天守は、最初から整った塔として見るより、建物に機能を載せていった構造として見ると面白い。
下部は何を担っているのか。
上部は何を見るためにあるのか。
その二つがどう重なっているのか。
望楼型天守を見ることは、天守が完成された形式へ向かう前の試行錯誤を読むことでもある。
望楼型天守は、機能を積み上げた初期天守である
望楼型天守とは、大きな建物の上に、見張りのための望楼を載せたような形式の天守である。
下部には、防御と空間を担う建物がある。
上部には、遠くを見渡すための望楼が載る。
この構造は、初期天守らしい機能優先の考え方を示している。
まず守る。
その上で見る。
必要な高さを、上に追加する。
後の層塔型天守のように、下から上まで整然と積み上げられた形式ではない。
下部と上部の性格が分かれ、屋根の上に監視塔が載るように見える。
その不規則さは、望楼型天守の魅力である。
犬山城や彦根城の天守を見ると、天守がまだ定型化される前の、実用性と象徴性が重なった姿を感じることができる。
望楼型天守は、完成された美しさよりも、機能を優先した天守である。
防御建築に監視機能を載せた、初期の増築型アーキテクチャ。
そこに、望楼型天守のロジックがある。
- 参考文献・出典
- 城びと「理文先生のお城がっこう 城歩き編 第40回 望楼型天守と層塔型天守」
- 国宝犬山城「犬山城について」
- 国宝 彦根城「彦根城について」
- 文化遺産オンライン「彦根城天守、附櫓及び多聞櫓」
- nippon.com「日本の城 基礎講座[天守編]」
- 松山市「現存12天守について」
- 三浦正幸『城のつくり方図典 改訂新版』小学館、2016年
- 三浦正幸『城の鑑賞基礎知識』至文堂、1999年
- 中井均・加藤理文『城郭探検倶楽部 お城の新しい見方・歩き方ガイド』新人物往来社、2003年
- 西股総生『図説 戦う日本の城最新講座』学研プラス、2018年
- 執筆者 日本の旅侍編集部(メディア) 日本の旅侍は知的旅〜オトナの城旅を城写真と共に伝える情報メディアです。日本全国のお城を都道府県別にご紹介。国宝天守・現存天守・復元天守・櫓・石垣・お堀などお城の様々な要素を写真共に伝えます。お城の歴史コラムもあり。 公式HP・SNSはこちら